AIが過去の情報を参照するようになると、問われるのは記憶量だけではない。どの情報を取り込み、何を止めれば利用が止まり、元の記録はどこに残るのか。Even G2のKnowledge Baseをめぐる更新は、こうした管理の単位を考える材料になる。
会話を支える資料にも、入口がある
イノベトピアは、Even G2のv2.4.0で個人用Knowledge Baseや会話サポートのProモードなどが加わったと報じた。公式のAIパーソナライズ機能向け通知では、利用者がアップロードする文書と、利用を認めたConversateの記録を、回答や会話中の補助に使う仕組みとして説明している。
過去のEven AIとの会話を使うAI Memoryと、資料をまとめるKnowledge Baseは関連するが別の機能だ。Knowledge Baseの利用にはAI Memoryを有効にする必要がある一方、AI Memoryを有効にしただけでKnowledge Baseへの同意が成立するわけではない。この違いは、便利さのために何を許可したかを確認する際の出発点になる。
新機能は、利用者のすべての情報を完全に記録する仕組みとして説明されていない。公式通知も、会話やファイルのバックアップ・同期サービスとは目的が違うとする。知識を使って返答できることを、情報の保存が保証されることと混同すると、後で必要な記録が見つからない恐れがある。
無効化、参照元の削除、原本の削除は別の操作
文書や会話記録をKnowledge Baseへ加える方法には、初期設定時の取り込み、後からの追加、新しい記録の自動同期がある。いずれも任意とされる。手動追加のつもりで使っているのか、自動同期を有効にしたのかで、後から増える情報の範囲は変わる。
公式通知によれば、Knowledge Baseを無効にすると、その資料を個人向け応答に使う動作は止まる。ただしAI Memoryは別に有効のまま残り得る。Knowledge Baseから会話記録を取り除いても、元のConversateの履歴を削除したことにはならない。元の記録やクラウド上のファイルを消す管理も別に用意されている。
この構造は、「停止した」と「消えた」を区別する必要があることを示す。業務利用の終了時には、機能を止める、参照元を外す、原本を扱う、という段階で確認すると、意図した操作を説明しやすい。実際に削除する前には、必要な保存記録を確保できているかも確認したい。
会議で使うなら、資料の選定が品質管理になる
ここからは実務に関する編集部の考察だ。会議の補助に過去の記録を使うなら、内容が多いほど良いとは限らない。旧価格の提案書と新しい条件表を区別せずに入れると、AIがどの時点の情報を採ったか分かりにくくなる。資料に日付と用途を付け、終了した案件の記録を参照し続けない運用が必要になる。
会話の当事者が同じでも、使う目的は変わる。社内の打ち合わせを助けるために残した記録を、外部商談の補助に流用してよいかは別に考えるべきだ。個人の会話と顧客の情報が一つの知識集へ集まると、必要な情報だけを使わせることが難しくなる。まず限定した資料群で試し、出力がどの資料に基づくかを人が追える状態を作りたい。
会話中に短い手がかりが見えることは便利でも、それ自体が正しい判断の証明にはならない。提案に使う数値や契約条件は原文へ戻って確認する。発言の流れに合うことと、事実の裏付けがあることを分けて評価すれば、補助機能の役割も明確になる。
便利さを、選べる範囲で使う
資料を一度だけ会話へ渡す使い方と、次の会話にも残す使い方は、目的が違う。一回の打ち合わせに必要な前提と、継続して参照する知識を分ければ、終了した予定や一時的な条件が後の回答へ混ざるのを防ぎやすい。新しい資料を加えるときだけでなく、案件の終了や担当者の交代を、参照元を見直すきっかけにするとよい。
公式通知は、これらのパーソナライズ用データを一般向けモデルの訓練や広告目的には使わないとしている。一方、利用者自身が追加する資料には機微な情報が含まれ得る。機能の目的が限定されていることと、どんな情報でも入れてよいことは同じではない。
導入時に確認したいのは、記憶があるかどうかだけではない。何が入ったかを一覧で見られるか、不要な資料を外せるか、停止後の状態を説明できるかである。小さな資料集合で利用の効果を確かめ、管理できる範囲を広げる方が、後から大量の履歴を整理するより運用しやすい。
運営会社のRO合同会社への相談では、会議の種類、参加者、参照したい資料、記録を残す期間を整理すると、AIへ渡す情報の範囲を具体化しやすい。
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