OpenAIのGPT-6.1 Terraは、画面や図を読み、コンピューターを操作する仕事で費用と速度のバランスを狙うモデルだ。同じ評価点に到達しても、必要な推論量や実行費用が違えば、任せる作業は変わる。上位モデルの代わりを一律に選ぶのではなく、転記、資料作成、例外判断を分けて比較することが重要になる。
OpenAIは10月26日に発表した。本稿は10月28日朝に公式発表、モデル・料金案内、安全性資料を確認し、発表者の評価値と日本の業務で検証すべき点を分けて整理する。
単価が下がったとき、実務の何が変わるか
公式モデル案内と料金表では、標準のAPI料金は100万トークン当たり入力1ドル、出力5ドル。GPT-6.1 Solの入力2ドル・出力10ドルに対して半額となる。前身GPT-5.6 Terraの入力2ドル・出力12ドルと比べると、入力は50%、出力は約58%下がる。二つの比較を同じ割引率として扱わないようにしたい。
文脈長は約105万トークンで、文字と画像を入力できる。ただし長い入力の料金には条件がある。27万2,000トークンを超える場合は、リクエスト全体の入力・キャッシュ料金が2倍、出力が1.5倍になる。大量の資料を常に一括投入する設計では、短い文脈の単価だけで月額費用を見積もれない。
APIの従量課金と、ChatGPT WorkやCodexのプラン料金・利用枠も別の仕組みである。単価が下がったから月額プラン自体が半額になった、とは読めない。実際の提供はプランやアカウントへの順次展開を伴うため、利用画面と管理者の設定を確認する必要がある。
一つの評価点では決められない
OpenAIの発表は、専門的なコンピューター作業を集めたAgents’ Last Examで、推論量mediumのTerraが57.6%に達したと示す。前身の42.6%から15ポイント上がり、同条件の作業費用は0.84ドルから0.29ドルになった。GPT-6 Astraもmediumでは57.6%だが、図の費用は4.82ドルである。
この結果は、特定の課題と実行環境で費用効率が改善したという材料になる。ただし、すべての仕事でAstraと同じ能力を持つことや、社内システムで同じ単価になることを示していない。評価の版、推論量、ツール構成、再試行の数をそろえなければ、点数と費用の比較はずれる。
デスクトップ操作のOSWorld 2.1を見ると、上位のGPT-6.1 Solが強い設定もある。最大設定ではSolが78.0%・1.15ドル、Terraが74.2%・1.19ドルとされ、軽いモデルが常に最安になるわけではない。難しい課題に長く考えさせるより、上位モデルに早く引き継いだほうがよい場合がある。
画像理解のMMMU-Pro、科学的な作業のTerminal-Bench-Science、コーディングのTerminal-Benchも、測る対象が異なる。科学的作業では推論量を上げたときの改善と費用増が大きい。OpenAI自身も最も複雑なコーディングにはSolやAstraを勧めている。用途別の向き不向きを、総合的な順位へ無理に押し込めない読み方が必要だ。
読み取りと操作を一緒に評価する
発表が挙げる用途には、技術図面の理解、フォーム入力、請求書を会計ソフトへ転記する処理などがある。ここでは文章を読めるだけでも、ボタンを押せるだけでも足りない。対象を正しく理解し、入力欄を選び、変更後の状態を確かめる一連の動作が必要になる。
以下は本稿の導入上の考察だ。日本語の帳票で試すなら、通常の形式だけでなく、税率が複数ある請求書、訂正伝票、読みにくい画像、金額と振込先が離れた配置など、実際に手戻りが起きる例を含めたい。読み取りの正答率と、誤入力を止められた割合は分けて測る。
最初から本番の支払処理に接続する必要はない。過去の資料や架空データで、抽出結果を人が確認できる一覧へ出し、操作は検証環境の保存までに限定する。対象、件数、変更差分を確認してから次の工程へ進めるようにすれば、モデルを変えた影響も追いやすい。
事実性の改善と、残る誤り
OpenAIは、誤りを誘う社内問題で前身より誤答率が下がったと報告する。low設定で53.6%から16.7%、最大設定で22.3%から4.3%という比較だ。これは同社の問題群での測定であり、日本語の請求書における誤入力率としてそのまま使うことはできない。
業務で必要なのは、分からない項目を推測して埋めないこと、資料同士が食い違う場合に止まれること、出した値の根拠へ戻れることでもある。平均的な正答率が上がっても、振込先や数量の誤りのように、少数でも影響の大きいミスは別に管理する必要がある。
費用の比較にも人の作業を含めたい。API料金、待ち時間、再実行に加え、人による確認と修正、処理失敗の調査がある。安いモデルを何度も呼び出して修正するより、難しいケースだけ上位モデルや担当者へ渡すほうが総費用を抑えられる可能性がある。これは現場ごとの検証で確かめるべき仮説である。
安全性の区分は利用の許可証ではない
システムカードでは、サイバー能力をCritical、生物・化学をHighとして扱う。これは能力とリスクに対応するための評価区分であり、危険な用途を自由に行えるという意味ではない。上位モデルの保護をTerra向けに調整して適用すると説明している。
画面操作では、Webページやメールに含まれる不正な指示も問題になる。プロンプトインジェクションへの耐性が改善していても、外部資料の文章を操作命令として受け入れない構成、権限を絞る設定、重要な送信・確定前の本人確認は必要だ。情報を読んだだけの段階と、外部システムを変えた段階を記録上でも分けたい。
モデル名ではなく、引き継ぎ条件を決める
Terraを導入する際には、通常ケースを任せる条件と、上位モデルや人へ戻す条件を先に決める方法が考えられる。資料不足、複数候補、入力画面の変更、想定外の金額などを境目にすれば、モデルの自己申告だけに頼らず運用できる。
AI社員や業務エージェントの設計については、運営会社のRO合同会社が公式サイトで相談を受け付けている。モデル選定の前に、対象作業、確認の方法、失敗時の戻し方を整理することが重要だ。
参考報道:イノベトピア。本文の性能値は発表者の測定で、本メディアが実行したベンチマークではない。
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