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分散型金融における信用評価の現状

分散型金融(DeFi)の世界は、中央集権的な管理者を介さず、ブロックチェーン上で直接金融取引を行う新しいやり方です。しかし、この仕組みには、従来の金融システムが持つ「信用情報機関」が存在しないという大きな課題があります。銀行やカード会社は、個人の収入や過去の借入・返済履歴を詳細に記録し、それに基づいて信用スコアを算出します。これにより、貸し手は借り手の返済能力を判断し、適切な融資を行えるのです。

DeFiでは、このような個人情報はプライバシー保護の観点から公開されません。借り手の情報は、ブロックチェーン上に記録された公開データ、すなわち「オンチェーン」活動に限られます。このデータだけを頼りに、借り手が本当に返済できるのか、どれくらいの額を貸せるのかを判断するのは非常に困難でした。担保を要求する融資が主流でしたが、無担保融資を拡大するためには、新しい信用評価の仕組みが不可欠でした。

zLendが提供する新しい分析手法

この課題に対し、zLendは画期的な解決策を提示します。zLendは、個人の口座における日々の資金の出入りを、トークン移動の生データから詳細に再構築します。この再構築プロセスは、二つの異なる視点から行われます。

一つ目の視点は、「ステーブルコイン」に限定した資金の流れを見るものです。ステーブルコインは、米ドルなどの法定通貨に価値が固定されており、価格変動リスクが非常に低いという特徴があります。この視点では、口座がどれだけ安定した、すぐに使える資金を持っているかを評価します。

二つ目の視点は、すべての代替可能なトークン移動を含む、より広範な資金の流れを見るものです。これには、価格変動の大きい仮想通貨や、その他のデジタル資産も含まれます。この視点では、口座全体の資産状況と、その資産がどのように動いているかを把握します。

なぜ二つの視点が必要なのでしょうか。それは、口座の「総資産」と「流動的な資金」、つまりすぐに使えるお金とは、全く異なるからです。例えば、高額なNFT(非代替性トークン)や、一時的に価格が高騰している仮想通貨を多く持っていても、それらがすぐに現金化できない、あるいは売却時に大きな損失が出る可能性がある場合、その資産は流動性に欠けます。zLendは、この二つの視点を比較することで、総資産は多いが、安定した流動資金が不足している「流動性ミスマッチ」の状態にある口座を正確に特定し、リスク評価の精度を高めます。

独自の指標とその意味

zLendは、再構築された資金の流れから、短期的な返済能力を測るための複数の独自の指標を導き出します。

  • 流動性確保の度合い: 特定の融資規模に対して、口座がどれだけの安定した流動資金を確保しているかを示します。これは、借り手が緊急時にどれだけ迅速に資金を調達できるかの目安となります。
  • 資金の流れの変動性と規則性: 口座の資金の出入りがどれだけ安定しているか、あるいは不規則かを分析します。安定した資金の流れは、返済能力が高いことを示唆します。
  • ドローダウンと回復の統計: これは定量金融の世界から応用された指標です。口座の残高が一時的に大きく減少(ドローダウン)した後、どれくらいの速さで回復しているかを測ります。これは、借り手が予期せぬ出費や市場の変動にどれだけ耐え、立て直せるかを示す重要な情報です。
  • 定期的な支払いパターンの検出: 送金のタイミングや金額のパターンを分析することで、給与のような定期的な収入源があるかを推測します。これにより、安定した収入がある口座を特定し、信用度を評価する手助けとなります。

これらの複合的な指標を用いることで、zLendは、従来の信用情報がない中でも、借り手の返済能力を多角的に、かつ深く分析することを可能にします。

信用評価の精度を高める仕組み

zLendの信用評価は、「ティア」と呼ばれる段階的な評価システムによって行われます。このティア割り当ては、主に参照する融資規模によって大きく左右されます。例えば、10ドルの少額融資と25,000ドルの高額融資では、同じ口座であっても割り当てられるティアが変わるケースが確認されています。実際に、テストされた6つの参照口座のうち、4つが融資規模によってティアが変更されました。

また、ドローダウンに関する基準と、流動性確保に関する基準は、それぞれ異なる口座に適用されることが分かっています。これは、どちらか一方の基準が他方を完全に包含するわけではなく、両方の基準が独立して重要な役割を果たしていることを意味します。zLendのティア評価ルールに含まれるどの基準も無効なものはなく、それぞれが信用評価の精度向上に貢献しています。

実運用と今後の展望

zLendはすでに本番環境で稼働しており、サードパーティのAPI連携を通じて、実際の分散型融資の判断に情報を提供しています。この仕組みは、分散型金融における信用評価の透明性と信頼性を高め、より多くの人々がアクセスできる健全な融資市場の実現に貢献すると私は考えます。

私の見方では、この技術は単なる信用評価ツールに留まりません。オンチェーンデータから個人の金融行動を深く理解する新しい扉を開くものです。将来的には、DeFiだけでなく、Web3の様々なサービスにおいて、ユーザーの信頼性を評価する基盤となる可能性を秘めていると感じます。この分野の進化は、最速で進むべきです。

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柴亮太
柴亮太の視点

分散型金融の信用評価は、データが全てです。総資産と流動資産を分けて見るのは当然の発想です。この二つの視点でどこまで精度が出せるか。自分ならまず、過去の失敗事例を徹底的に分析し、この仕組みの弱点を探します。一次情報が重要です。