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3-2 Dify型のビジュアルワークフローで作る

第3章 ノーコード・ローコードで作るAIチャットボット

想定学習時間: 13分

ビジュアルワークフローでAIチャットボットを構築する

AIチャットボットをノーコード・ローコードで構築する際、代表的な考え方の一つに「ビジュアルワークフロー型」があります。これは、処理の流れを画面上で視覚的に組み立てる方法です。

単に文章で指示を記述するだけでなく、入力、判断、AI回答、資料検索、外部ツール連携、出力といった一連の流れを、まるでブロックを繋ぎ合わせるように設計します。この考え方を理解すると、AIチャットボットの構築がより現実的になります。

チャットボットの「裏側」を設計する

チャットボットは、単に質問に答えるAIではありません。実際の業務では、会話の裏側でさまざまな処理が必要になります。例えば、以下のような流れです。

このような複雑な流れをすべてコードで書こうとすると、難しく感じることがあります。しかし、ビジュアルワークフロー型のツールを使えば、処理の流れを目で見ながら直感的に作成できます。DifyのようなAIアプリ構築ツールは、この考え方と非常に相性が良いです。

ここで大切なのは、Difyの操作方法を覚えることだけではありません。より重要なのは、AIチャットボットを「会話の流れ」と「処理の流れ」に分けて考える視点です。

この裏側の流れを作るのがワークフロー設計であり、ビジュアルワークフロー型はこの流れを見える化できる点が大きな強みです。どこでAIに考えさせるか、どこで資料を検索するか、どこで条件分岐するか、どこで人間につなぐか、どこで外部ツールへ情報を送るか、といった判断を画面上で整理できます。

AIの自由度と業務ルールのバランス

たとえば、問い合わせ受付ボットを作る場合を考えてみましょう。最初に利用者のメッセージを受け取り、AIが相談内容を「料金」「サービス内容」「予約」「担当者相談」「その他」などに分類します。分類結果に応じて、以下のように会話の流れを変えることができます。

このような分岐をビジュアルワークフローで作成することで、AIにすべてを自由に任せるのではなく、業務に合わせた流れを持たせることができます。AIチャットボットでは、AIの自由度と業務ルールのバランスが重要です。すべてを固定シナリオにすると硬くなり、すべてをAIに任せると回答が不安定になります。ビジュアルワークフロー型は、この中間を作りやすいのが特徴です。

このように役割を分けることで、実用的なAIチャットボットになります。

Dify型チャットボットの種類と選び方

Dify型の構築で最初に考えるべきは、どのような種類のチャットボットを作るかです。大きく分けると、次のタイプがあります。

  1. シンプルな会話型チャットボット: 利用者の質問に対して、AIが自然な文章で答える。サービス案内、FAQ対応、簡単な相談受付などに向いています。
  2. ナレッジベース参照型: あらかじめ登録した資料、FAQ、マニュアルなどを参照して答える。社内FAQ、サービス説明、技術サポートなどに向いています。
  3. ワークフロー型: 質問の分類、条件分岐、情報収集、外部ツール連携などを組み合わせる。問い合わせ受付、資料請求、営業ヒアリングなどに向いています。
  4. 外部ツール連携型: チャットで聞き取った情報をスプレッドシートへ保存したり、Slackへ通知したり、メール送信やCRM登録につなげたりする。実際の業務フローにAIを組み込む場合に重要です。

最初からすべてを使う必要はありません。まずは、シンプルな会話型か、ナレッジベース参照型から始めるのが現実的です。例えば、社内マニュアル検索ボットを作るなら、ナレッジベース参照型から始め、社員が質問し、AIがマニュアルを検索して回答し、必要なら担当部署へつなぐ構成で十分です。

Dify型構築の主要要素

ナレッジベースの活用と資料準備

Dify型の構築でよく使う考え方が「ナレッジベース」です。これは、AIが参照するための知識の保管場所で、PDF、テキスト、FAQ、マニュアルなどを登録し、AIが質問に応じて必要な情報を探せるようにします。AIチャットボットの回答品質を上げる上で非常に重要です。

AIに自由に答えさせると一般論が多くなりがちですが、ナレッジベースを使えば、自社の情報に基づいた回答を作りやすくなります。ただし、ナレッジベースは資料を入れれば終わりではありません。AIに渡す情報は整理されている必要があります。古い資料、重複した資料、矛盾した資料を入れると、回答も不安定になるため、以下の点に注意して資料を整えることが大切です。

この準備が、ナレッジベース型チャットボットの品質を左右します。

プロンプトの役割

ナレッジベースがあるだけでは、AIは必ずしも期待通りに答えません。どのように答えるのか、どこまで答えるのか、資料にないことを聞かれたらどうするのか、個別判断が必要な場合はどうするのか、といった方針をプロンプトで指示する必要があります。

例えば、社内FAQボットなら、次のような方針をプロンプトに含めることができます。

「登録された社内資料に基づいて回答してください」
「資料にない内容は推測で答えず、担当部署への確認を促してください」
「最初に結論を短く伝え、その後に手順を説明してください」
「関連する資料がある場合は、参照先を案内してください」

このように、ナレッジベースとプロンプトを組み合わせることで、AIの回答を制御します。

AIに任せる部分とルールで固定する部分

Dify型のビジュアルワークフローでは、AIに考えさせる部分と、固定ルールで処理する部分を分けることも重要です。例えば、利用者のメッセージから意図を分類する部分はAIに任せられます。これは自然言語理解が得意なAIの出番です。

一方で、「料金について質問されたら、必ず『個別見積もりは担当者確認』と案内する」「クレームの場合は、必ず人間へつなぐ」といったルールは固定しておく方が安全です。AIに任せる部分と、ルールで固定する部分を分けることが、実用的なワークフロー設計の鍵となります。

入力項目の設計

問い合わせ受付や資料請求では、利用者から必要な情報を聞き取る必要があります。しかし、一度に多くの情報を聞くと、利用者の離脱につながることがあります。チャットでは、会話の流れに合わせて少しずつ聞くのが効果的です。

ビジュアルワークフローでは、この確認の順番を設計できます。どの情報が必須か、任意か、どの条件になったら聞くのか、どこまで聞いたら完了なのかを決めておくことで、利用者に余計な負担をかけずに必要な情報を集められます。

外部ツール連携

AIが会話するだけでは、業務の一部しか変わりません。しかし、聞き取った内容を外部ツールに渡せると、AIチャットボットを業務フローに組み込めます。

このような連携ができると、AIチャットボットは単なる会話窓口ではなく、業務の入口になります。ただし、外部連携は最初から複雑にしすぎない方が良いでしょう。まずは、通知と記録だけでも十分です。その後、必要に応じて連携を追加していくのがおすすめです。

ワークフロー設計のヒントと注意点

ビジュアルワークフローは便利ですが、作り方を間違えると複雑になりすぎることがあります。分岐を増やしすぎる、例外処理を入れすぎる、細かい条件を重ねすぎる、外部ツール連携を増やしすぎる、AIへの指示が複数箇所に分散すると、後から修正しにくく、誰が見ても流れがわからないチャットボットになってしまいます。

最初は、シンプルな流れから始めるのが良いでしょう。

入口、分類、回答、必要情報の確認、人間への引き継ぎ、記録、完了メッセージ

この程度から始め、運用しながら必要な分岐だけを追加し、使われていない分岐は削除するなど、ワークフローも会話ログを見ながら育てていくものです。

完成度よりも可視化を重視する

Dify型の構築で初心者が意識すべきポイントは、完成度よりも「可視化」です。AIチャットボットの流れを頭の中だけで考えず、紙に書く、図にする、ワークフローにするなどして、入口から出口までを見えるようにしましょう。

これが見えることで、改善しやすくなります。また、現場担当者、経営者、システム担当者など、関係者全員が同じ図を見ながら話せるため、認識のズレが減り、スムーズな意思決定につながります。

最初の一歩:おすすめのDify型チャットボット

では、最初にどんなDify型チャットボットを作るべきでしょうか。おすすめは、以下の2つです。

1. 問い合わせ一次受付ボット

業種を問わず使いやすく、成果も見えやすいのが特徴です。基本的な流れは次のようになります。

  1. 利用者が相談内容を入力する。
  2. AIが内容を分類する。
  3. 必要な情報を一つずつ聞く。
  4. よくある質問ならその場で答える。
  5. 個別対応が必要なら、担当者へつなぐ。
  6. 相談内容を要約する。
  7. 担当者へ通知する。
  8. 利用者に受付完了を伝える。

この流れだけでも、実務上かなり役立ちます。

2. 社内FAQボット

社内資料をナレッジベースに入れ、社員が自然な言葉で質問できるようにするものです。まずは一部署だけでも良いので、経費精算、営業資料、社内ツール、商品情報など、範囲を絞って始めましょう。

社内利用であれば、外部顧客への影響を抑えながら試せます。AIがどのように答えるか、どこで情報が不足するかも確認しやすく、AIチャットボットの練習としても適しています。

まとめ:ビジュアルワークフローでAIチャットボットの構造を理解する

Dify型のようなビジュアルワークフローは、AIチャットボット構築の考え方を学ぶ上で非常に有効です。AIに質問を投げるだけでなく、業務の流れを作る、ナレッジベースを整える、プロンプトで役割を決める、条件分岐で安全性を作る、外部ツール連携で業務につなぐ、会話ログで改善する、といった一連の流れを体験できます。

初心者にとって、最初からAPI開発に入るのはハードルが高いですが、ビジュアルワークフローであれば、AIチャットボットの構造を目で見ながら理解できます。もちろん、Dify型のツールにも限界はありますが、AIチャットボットの最初の構築、社内検証、小規模運用、業務フローの試作には非常に有効です。

大切なのは、最初から完成形を求めないことです。小さな問い合わせ受付を作る、一つのFAQに答えさせる、一つの資料を検索させる、担当者通知だけを作るなど、そこから少しずつ広げていきましょう。ビジュアルワークフローは、その段階的な成長に向いています。

AIチャットボットは、会話の道具であると同時に、業務フローの入口でもあります。ビジュアルワークフローを使えば、その入口を自分の手で設計できるようになります。まずは、画面上で「入力、AI回答、ナレッジ検索、人間への案内」といった基本的な流れをつなぐところから始めてみましょう。

人にたとえると

あるイベント会社で、お客様からの問い合わせからイベント実施までの流れを設計する場面を想像してみましょう。

イベント企画担当者は、お客様からの相談内容に応じて、まず受付担当者に話を聞かせます。受付担当者は、相談内容が「料金」か「日程」か「その他」かを判断し、それぞれ専門の担当者へ振り分けます。料金担当者は料金表を、日程担当者は空き状況カレンダーを参照して回答します。もし特別な要望があれば、企画担当者が直接対応するよう指示が出され、その内容は記録係が控えます。この一連の流れは、大きなホワイトボードに書かれた図で共有されています。

ホワイトボードの図=ビジュアルワークフロー
受付担当者=AI(意図分類)
料金表・空き状況カレンダー=ナレッジベース
記録係=外部ツール連携