ai.ros Asset Store

← AIチャットボット構築 | Lesson 9 / 25
9

2-4 プロンプト設計の基本

第2章 AIチャットボット構築の基本設計

想定学習時間: 10分

プロンプト設計の基本

AIチャットボットを構築する上で、プロンプト設計は避けて通れない重要な要素です。プロンプトとは、AIに対する指示文のことであり、「あなたは何者で、何を目的に、どのように答えるのか」をAIに伝える設計書と考えることができます。

AIチャットボットは、ただAIと接続しただけでは安定した運用が難しい場合があります。利用者の質問に対してそれらしい答えを返すことはできても、それが会社の意図に沿っているか、正しい範囲で答えているか、利用者に分かりやすいか、あるいは担当者へ引き継ぐべき場面で適切に判断できるか、といった点は保証されません。そのため、AIに役割を与え、会話の範囲や回答の方針を明確にするプロンプト設計が必要になります。

AIの役割を定義する

プロンプト設計の最初のステップは、AIの役割を明確にすることです。チャットボットが「何のためのAIなのか」「誰に向けて答えるのか」「どのような立場で案内するのか」「どこまで対応するのか」を具体的に定義します。

例えば、ホームページに設置する問い合わせ受付ボットの場合、次のように役割を定義できます。

あなたは、株式会社〇〇の問い合わせ受付AIです。初めてサービスを検討する利用者に対して、サービス内容、料金の目安、予約方法、よくある質問をわかりやすく案内します。個別判断が必要な内容は断定せず、担当者への問い合わせへ案内してください。

この定義により、AIは単なる情報提供者ではなく、会社の問い合わせ受付として振る舞い、対象利用者や案内内容、対応範囲、そして担当者への引き継ぎ判断まで、その行動指針が明確になります。

会話の目的を設定する

次に、AIチャットボットが達成すべき会話の目的を設定します。単に質問に答えるだけでなく、会話の最終的なゴール(例: 問い合わせ、予約、資料請求、自己解決、担当者への引き継ぎなど)をプロンプトに含めます。

例えば、予約前案内ボットであれば、目的は次のようになります。

利用者の不安を解消し、必要に応じて予約ページへ案内してください。

目的が明確になることで、AIの回答に一貫した方向性が生まれ、利用者をゴールへと導く会話が可能になります。

回答の口調を決める

AIの回答の口調は、利用者に与える会社の印象を大きく左右します。親しみやすさ、丁寧さ、分かりやすさ、信頼感など、チャットボットの目的に合わせて口調のルールを具体的に定めます。

例えば、次のような指示をプロンプトに含めることができます。

  • 丁寧でわかりやすい敬語で答えてください。
  • 専門用語はなるべく使わず、初心者にも伝わる表現にしてください。
  • 一文を短くし、必要に応じて箇条書きで整理してください。
  • 不安を感じている利用者には、安心できる言葉を添えてください。
  • 強引な営業表現は避けてください。
  • 社内向けなので、結論を先に簡潔に答えてください。

これにより、AIの回答にばらつきがなくなり、安定したコミュニケーションが可能になります。

回答形式を指定する

AIに自由に回答させると、情報が不足したり、逆に長くなりすぎたりすることがあります。そのため、回答形式を具体的に指定することで、整理された分かりやすい回答を促します。

問い合わせ対応の場合、次のような形式が考えられます。

回答は、結論、補足、確認質問、次の案内の順で構成してください。ただし、不要な場合は確認質問を省略してください。

社内FAQであれば、さらに簡潔な形式を指定することも可能です。

確認質問を設計する

利用者の質問が曖昧な場合、AIはすぐに長い説明を始めるのではなく、必要な情報を確認する質問を適切に行う必要があります。これにより、会話が無駄に広がることを防ぎ、効率的な情報収集が可能です。

例えば、「料金はいくらですか?」という質問に対して、サービス内容によって料金が変わる場合、次のように確認質問を促します。

ご希望のサービス内容によって料金が変わります。まず、どのサービスについて知りたいですか?

ただし、確認質問を多くしすぎると利用者の負担になるため、「確認質問は一度に一つから二つまで」といったルールを設けることが重要です。

禁止事項を明確にする

プロンプト設計において最も重要な部分の一つが、答えてはいけないこと(禁止事項)を明確にすることです。AIは親切心から必要以上に踏み込んだ回答をすることがありますが、ビジネスにおいてはこれがリスクとなる場合があります。

特に、法的、医療的、税務的、投資的な最終判断、断定的な表現、推測での回答などは避けるべきです。プロンプトには、次のような禁止事項を具体的に記載します。

  • 法的、医療的、税務的、投資的な最終判断は行わないでください。
  • 個別事情によって変わる内容は断定しないでください。
  • 不明な点は推測で答えず、担当者確認へ案内してください。
  • 最新情報が必要な内容は、公式情報または担当者確認を促してください。
  • 対応できない内容を、対応できると表現しないでください。

これにより、AIの回答リスクを大幅に低減できます。

人間につなぐ条件を決める

AIチャットボットが対応できない、またはすべきでない状況では、スムーズに人間(担当者)へ引き継ぐ条件を設定します。利用者が担当者対応を希望する場合や、個別判断、クレーム、緊急性の高い内容が含まれる場合などが該当します。

例えば、次のような案内を用意しておくことで、AIが無理に回答を続けず、適切なタイミングで引き継ぎます。

この内容は担当者の確認が必要です。詳しい状況を確認するため、お問い合わせフォームへお進みください。

AIチャットボットは、答える能力だけでなく、引き継ぐ判断も重要です。

情報不足時の対応を決める

AIが知らないことを聞かれた際に、どのように対応するかを定めておくことも大切です。推測での回答は誤解やトラブルの原因となるため、避けるべきです。

プロンプトには、次のように指示します。

  • 根拠となる情報がない場合は、推測で答えないでください。
  • わからない場合は、正直に確認が必要であることを伝えてください。
  • 利用者に不安を与えないよう、次の確認方法を案内してください。

「申し訳ありません。その内容は現在の情報だけでは確認できません。担当者が確認しますので、詳しい内容をお問い合わせください」といった回答は、信頼性を高めます。

具体例を活用する

抽象的な指示だけではAIの振る舞いがぶれる可能性があるため、具体的な質問と回答例をプロンプトに含めることが有効です。これにより、AIは回答の雰囲気やニュアンスをより正確に理解しやすくなります。

質問例:料金はいくらですか?
回答例:料金はご希望の内容によって変わります。目安は〇〇円からですが、詳しい金額は状況を確認したうえでご案内します。概算を知りたい場合は、現在のご希望を教えてください。

質問例:担当者と話したいです。
回答例:承知しました。担当者へおつなぎします。相談内容を簡単に入力していただければ、確認後にご案内します。

プロンプトの構成とテンプレート

プロンプト設計では、必要な指示を整理して書くことが重要です。基本的なプロンプトの構成要素は次の通りです。

これらの要素を基にしたシンプルなテンプレートは次のようになります。

あなたは〇〇のAIチャットボットです。
対象は〇〇に関心がある利用者です。
目的は、〇〇に関する不安を解消し、必要に応じて〇〇へ案内することです。
回答は丁寧でわかりやすい敬語にしてください。
専門用語は避け、初心者にも伝わる表現にしてください。
回答は結論、補足、必要な確認質問、次の案内の順にしてください。
確認質問は一度に一つまでにしてください。
個別判断が必要な内容は断定せず、担当者確認へ案内してください。
根拠のない情報は推測で答えないでください。
クレーム、緊急性の高い内容、担当者希望の場合は、人間へつないでください。

実際の運用では、ここに会社情報、サービス情報、FAQ、禁止表現、回答例などを追加し、必要に応じて取得すべき情報(例: 名前、連絡先、相談内容など)も指定します。

プロンプトの継続的な改善

プロンプトは一度作成したら終わりではなく、実際の会話ログを見ながら継続的に改善していく必要があります。例えば、次のような問題点が見つかることがあります。

これらの問題は、実際に使ってみて初めて見えてくるものです。問題が見つかるたびにプロンプトを調整し、AIチャットボットの品質を高めていきます。

まとめ

プロンプト設計は、AIに会社の接客方針を教える作業です。AIが「どう答えるのか」「どこまで答えるのか」「どこから人間につなぐのか」「どんな言葉を使うのか」「何を避けるのか」「どんな状態をゴールにするのか」を明確に伝えることで、AIチャットボットは単なる会話AIから、業務で使える受付係、案内係、整理係へと変わります。

AIの性能に任せきりにするのではなく、AIに役割を与え、その振る舞いを設計すること。その中心にあるのがプロンプトです。良いプロンプトがあれば、AIは迷いにくくなり、利用者も安心して利用でき、担当者も安心してAIに任せることができます。実用的なAIチャットボットを構築するためには、プロンプト設計を丁寧に行うことが近道となります。

人にたとえると

劇団の演出家が、新しい舞台の主役に役柄を説明し、演技指導を行う場面。

演出家は、主役の俳優に「あなたは何者で、この舞台で何を達成し、どのように振る舞うのか」という役柄の基本を伝えます。観客にどのような印象を与えるか、セリフの口調や表現方法、そして「絶対に言ってはいけないセリフ」や「困った時にどう対応するか」といった具体的な指示も細かく教え込みます。演出家は、俳優が迷わず、舞台の意図に沿った一貫した演技ができるよう、台本と指導を通して役柄の全てを設計します。

主役の俳優=AIチャットボット
演出家=プロンプト設計者
観客=利用者