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広告不正の現状と総務省の指摘

クリック数は前年より1割増えました。しかし、売上は横ばいです。増えた分の正体は、自動化された仕組みであるbotでした。広告不正が原因です。対策をすれば見かけの数字は下がります。しかし、それを成果の悪化と受け取られてしまうと、現場の担当者は動きにくいです。このジレンマについて、総務省はすでに文書で触れています。広告の数字は伸びているのに、売上などの事業成果が動かない。こうした乖離の一因が広告不正です。

複数の不正事例と共通の換金手口

米HUMAN Securityの脅威調査チームは、2025年3月から2026年7月にかけて複数の不正な手口を公表しました。BADBOX 2.0、SlopAds、Low5、Trapdoor、NewsJunkieなどです。これらは無力化が進められてきました。手口は端末の乗っ取りからネット接続テレビのなりすましまで様々です。侵入の手口はそれぞれ違います。しかし、このうち4件では、稼いだ広告費を回収する「出口」に共通のパターンが見られました。ウェブ技術であるHTML5のゲームやニュース系のドメインを換金の層として使う形です。2025年、日本のインターネット広告費は4兆459億円になりました。これは総広告費の過半数を初めて超えました。

不正の自己資金化とその巧妙な仕組み

2026年5月に公表されたTrapdoorは、この不正の構造が洗練された例です。利用者はまず、PDF閲覧ソフトや端末掃除ソフトのような実用的なアプリを手に入れます。このアプリ自体は不正を働きません。次に、そのアプリが広告を表示します。「アプリが古い」といった文言で別のアプリの導入へ誘導します。導入された二次アプリは、マーケティングの効果測定に使われる効果測定の仕組み(アトリビューション)情報を参照します。攻撃者の広告経由で導入された場合など、条件を満たしたときに、画面に見えないウェブ表示機能(WebView)や自動操作を伴う不正な動きを起動します。難読化と解析妨害が施されます。収益はウェブ技術であるHTML5の換金ドメインで回収されます。

この不正の仕組みで注目したいのは、規模ではなく循環の仕方です。広告不正で得た収益を、次のアプリを配布するための広告費へ再投入できます。広告不正が次の拡大資金を生む、自己資金化の循環です。HUMAN Securityの最高情報セキュリティ責任者であるゲイビン・リード氏は説明します。日常的なアプリのインストールが、不正を自己資金でまかなう流れに変えられている、と。もうひとつは、正規のツールを流用している点です。効果測定の仕組みは本来、広告主が自分の広告の効果を測るためのものです。脅威インテリジェンス担当のリンゼイ・ケイ氏は述べています。悪意あるソフト(マルウェア)が正規の開発キット(SDK)を装って紛れ込むなど、脅威がもはや単一の分類にきれいに収まらなくなっている、と。広告不正、悪意ある広告、悪意あるソフトの配布が、ひとつの流れになっています。

広告不正対策の課題

HUMAN Securityは、複数の不正オペレーションで換金基盤が共有・再利用されていたと説明します。アプリや端末だけでなく、この共有された換金基盤も対処の対象にする必要がある、としています。ここは、複数のオペレーションを横断して対処できる防御点のひとつです。しかし、広告不正の収益化経路がウェブ技術のサイトだけに限られるわけではありません。見かけの数字が下がることを恐れる現場のジレンマも、対策を遅らせる大きな要因です。広告不正は巧妙化し、対策はより複雑になっています。

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柴亮太
柴亮太の視点

アドフラウド対策は、見せかけの数字と本当の成果の間に生まれるジレンマです。現場が動けない気持ちは理解できます。しかし、不正な費用を垂れ流すのは経営判断として正しくありません。私の見方では、まず現状を正確に把握し、その上で戦略を立てるべきです。