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AIを使った音楽という言葉の中には、映像だけを生成する制作から、歌声そのものをAIで作る制作までが含まれる。日本コロムビアの新レーベル「Neoこぶし」を見ると、どの層にAIが入るかを分けて考える必要があることが分かる。老舗がAIへ初めて触れたという話ではなく、既に積み重ねてきた映像制作から、歌の表現へ対象を広げる動きだ。

日本コロムビアは2026年9月18日にNeoこぶしを発表した。10月20日に公式サイトを確認したところ、10月1日の3作品の配信開始とMV公開が告知されている。発表前後の原記事が「予定」としていた段階から、公式案内上は配信開始へ進んでいる。Neoこぶし公式サイト

人間とAIの歌い手が、同じレーベルに並ぶ

Neoこぶしは、演歌の七五調や余白の表現と高速なビートを組み合わせる「サイバー演歌」を掲げる。レーベルプロデューサーはプロハンバーガー巨匠 Ex.高野政所。公式サイトには、呼魂ひかり、望月琉叶、ENKA GIRLS REVOLUTIONの3組が掲載される。

10月1日の作品は、呼魂ひかりの「呼べば、ひかり」と、望月琉叶、ENKA GIRLS REVOLUTIONそれぞれの「ネオンしぐれ」だ。同じレーベルの中で、AI技術によるバーチャルな歌い手と人間の歌い手を並べる構成となっている。AIが人間を全面的に置き換えるという単一の図式では捉えにくい。

公式サイトはさらに、呼魂ひかりの「魂呼ぶ、山の声」を10月21日配信として予告している。確認日の10月20日には、これはまだ予定の情報だ。10月1日の配信開始と、翌日の予定を同じ公開済みの扱いにしないことが重要になる。今回、当メディアは各サービスの音源を全て再生して評価したわけではなく、公式の告知を確認している。

AIの取り組みは、レーベルの発表以前からあった

日本コロムビアグループの公式サイトには、2025年10月1日の会社設立、AIクリエイティブコンテストCOLOTEK、クリエイターとの共創ネットワークCOLOWORKS、NCG ENTERTAINMENTなどの取り組みが並ぶ。制作技術だけでなく、制作者の支援や作品を届ける仕組みも整えようとしてきたことが読み取れる。日本コロムビアグループ

同社は2026年6月、AIクリエイティブ制作事業の本格始動も告知している。公式の制作実績には、美空ひばりの「川の流れのように」「二人きりで」、德永英明の「飾りじゃないのよ涙は」などが掲載される。ここで、歌われている録音と、その録音へ重ねた映像を区別する必要がある。

過去の本人の歌声を使い、AIで新しい映像を制作した作品は、AIが本人の歌声を新たに生成した作品とは同じではない。映像にAIを使ったという事実から、歌詞、旋律、伴奏、歌唱のすべてがAI生成だと結論付けることはできない。作品ごとに制作の担当範囲を読むことが大切だ。

クレジットは、制作の説明の入口になる

元報道は、3作品の作詞・作曲がNeoこぶし名義で表示され、人間の歌手による2作品には編曲者として大野ヒロ氏が記されることを紹介している。一方、名前の表示だけから、契約上の持分や著作権の帰属まで確定することはできない。

AI生成を含む作品では、どこに人の創作的な判断があったか、誰が何を制作し、どの契約で公開しているかが別の論点になる。レーベル名義のクレジットは制作主体を伝える材料でも、すべての工程を開示する設計書ではない。AIツール名や学習データが公開されていなければ、その中身を推測で補うべきではない。

NCG ENTERTAINMENTの現在のサイトは、プロジェクトと参加クリエイターを分けて紹介する。美空ひばり「二人きりで」では、AoKi¹⁰⁴、neruko、Int.Labといった制作者が掲載されている。AIによる制作でも、人の企画、編集、デザイン、公開の判断が残ることを見せる構成だ。NCG ENTERTAINMENT公式

AIの関与を、作品単位で分けて説明する

ここからは編集部の考察だ。音楽作品の説明では、歌詞、作曲、編曲、歌声、伴奏、ジャケット、MVを別々に見ると、何が新しいのかを伝えやすい。人が歌う曲のMVだけをAIで作る場合と、AIの歌声を人が編集して作品にする場合では、制作の課題も権利の確認も変わる。

たとえば歌声の模倣が関わるなら、本人の同意や用途の範囲が重要になる。古い録音を使うなら、その音源の利用権と、新たに作る映像の権利を確認する必要がある。架空の歌手を作る場合も、既存の人物やキャラクターとの混同を避ける必要がある。どれも「AIを使った」という一言では説明が足りない。

演歌では、こぶし、間、語り口など、細部の表現が評価に関わる。AIを使うことで試せる表現の幅が広がっても、何を採用するかは制作側の判断になる。既存のジャンルを単に効率化するだけなのか、新しい聴き方を作るのかは、実際の作品と、その受け止められ方を見て評価する必要がある。

既存のレーベルが担う仕事も変わる

音楽を生成できる道具が普及しても、作品を継続的に届けるには、企画、権利確認、制作管理、配信情報の整備、宣伝、収益分配が必要になる。レーベルの役割は、音を作る工程だけでなく、その周囲の運用に広がる。AI作品が増えるほど、その説明責任も増える可能性がある。

NCG ENTERTAINMENTの公式サイトは、クリエイターが創作へ集中できるよう、契約や経理、企画の展開などを伴走する方針を示す。これはAIツールを使える人を集めるだけでなく、作品やキャラクターを継続する事業へ育てるという立場だ。実際の支援の成果は個々の案件で確かめる必要があるが、制作技術以外の課題へも目を向ける材料となる。

配信サービスでの表示も、制作側だけで完結しない。AI関与のクレジット、アーティストの名義、プロフィール、楽曲の登録情報は、配信先によって入力と表示の仕組みが違う。作品の制作記録と、公開時のメタデータをつないで管理すれば、訂正が必要な際にも対応しやすい。

計画、公開、評価を同じ段階にしない

原記事は、毎月4曲、年間約50曲という展開や、将来のVR・リアル合同ライブの構想も紹介していた。これらは当時示された計画として読むべきで、すべてが実現した実績ではない。今後は、実際に公開された作品、継続した配信、ライブの正式な案内などで進捗を確認することになる。

同じことは、権利保護の仕組みにも当てはまる。グループ内の別事業で説明されたチェック体制が、そのまま全作品へ同じ条件で適用されていると断定はできない。どの工程で誰が何を確認するかという具体的な運用を、作品ごとの説明として見る必要がある。

Neoこぶしの取り組みは、AIか人間かという二択よりも、どの表現を誰が担うかを考える材料になる。日本の音楽制作が蓄積してきた編集と事業の仕組みに、新しい生成技術をどう入れるか。その評価は、発表の新しさだけでなく、作品と説明を継続して確かめるところから始まる。音楽や映像を含むAIコンテンツの制作・公開工程については、運営会社のRO合同会社へ相談いただける。

参考報道:イノベトピアの元記事。確認日:2026年10月20日。音源への主観的なレビューではなく、公式サイトの告知と制作・運用上の論点を整理した。

柴亮太
柴亮太の視点