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AIを社内で使えるようにすることと、顧客が使いたいサービスを作ることには距離がある。博報堂とインキュデータが8月24日に発表したAI Service Design Programは、顧客との接点を設計するところから、実現可能性の確認、PoCへ進む工程を一つにまとめる支援だ。

最大で約50%の時間短縮という説明は目を引く。しかし、何の期間を短くする数字なのか、誰が企画と実装を担当するのかを確認すると、サービスを選ぶ際に必要な論点が見えてくる。

AIが接点になると、設計する対象が変わる

両社の公式発表は、生活者が自分で検索・比較・選択する体験に加え、AIが意図や状況を理解して相談、提案、実行を支援する体験が広がると説明する。自社のWebサイトの使い勝手だけでなく、そこへ到達する前の相談もサービス設計の対象になる。

たとえば顧客が「この商品が欲しい」と決める前に、生活上の困りごとをAIへ話す場合がある。企業側に必要なのは、商品名を答える仕組みだけではなく、状況を理解し、不明な条件を確かめ、提案する範囲を決めることだ。これは本稿の考察であり、特定の導入案件の成果ではない。

両社は、多くの企業のAI活用が効率化や生成にとどまり、生活者との新しい関係づくりには十分に進んでいないと見立てる。これは支援サービスの提供者による市場認識で、すべての企業の実態を調べた統計とは異なる。それでも、社内で使える技術と、顧客が使い続ける理由を分けて問う視点は有用だ。

構想から検証までをつなぐ

発表資料では、事業・顧客課題の整理、AI体験サービスの企画、ユーザー検証と実装判断、PoCへ進む流れを示す。初期段階で保有データ、既存システム、AI環境を確認し、企画段階で体験シナリオ、UX/UI、プロトタイプを具体化する。

企画だけを先に固めてからデータを探すと、必要な情報が取得できず作り直しになる可能性がある。逆に、保有データでできることだけを出発点にすると、顧客の困りごとから離れる。両者を早い段階で往復させることが、構想と実装を同じプログラムで扱う意味と読める。

ただしPoCは、本番サービスの完成を意味しない。限定されたユーザーや条件で仮説を確かめ、継続・修正・中止を判断するための段階である。本稿の提案として、何が確かめられれば次へ進むのか、どの失敗なら停止するのかを、試作の前に決めると評価を行いやすい。

二社の役割とAIエージェント

博報堂は生活者理解を踏まえたサービス企画・体験設計、インキュデータはデータ解析・AI技術の実装を担当する。さらに、独自のAIエージェントAI CXpertsが探索、分析、生成を支援し、専門人材の生活者・ブランド・事業の視点と組み合わせるとされる。

ここで、独自エージェントという言葉から、すべての企画判断や開発が自動化されると推測することはできない。基盤モデル、内部構成、実行権限の詳細、価格や標準契約の条件は、公開発表だけでは特定できない。外部へ資料を渡す場合は、保存先や再利用の扱いを契約で確認する必要がある。

インキュデータのAIガバナンス支援の発表は、技術の実装だけでなく、社内ルールやリスク管理も支援対象にする考え方を示す。今回のプログラムでも、データを使えるかという確認と、顧客にどのような影響を与えるかという確認を並行して進める余地がある。

50%は本番までの期間ではない

両社が示す最大約50%短縮の対象は、サービス機会の構想からPoC設計にかかる時間である。売上が50%増える、開発費が半分になる、PoCの成功率が倍になる、という意味には変えられない。

比較の基準となる従来の工程や案件数、測定方法は、発表の範囲では明確でない。導入検討時には、自社のどの工程と比較するのか、短縮した分の確認作業をどこで行うのかを聞く必要がある。目標値と実測値の区別も確認したい。

本稿の考察として、時間の短縮を測るなら、企画案が完成するまでに加え、関係部門の確認、データの利用許諾、試作の修正回数も残すとよい。短い期間でPoCへ進めても、後段で条件が未確定なら、総期間は短くならない場合がある。

顧客の代理人は誰なのか

AIによる提案では、表示される候補を誰の利益に基づいて並べるかが問題になる。企業の販売を支えるのか、顧客の比較を支えるのか、その両方なのか。顧客に伝えないまま立場が変われば、便利な提案でも信頼を損なう可能性がある。

試作で確かめる際は、答えが正しいかだけでなく、判断材料が足りないときに質問できるか、勧められない場合を伝えられるか、人へ引き継げるかを見たい。広告・推薦・相談の区別を利用者が理解できるかも、体験の評価に含めるべきだ。

また、AIが提案することと、予約や購入を確定することは別の操作である。顧客の希望、変更内容、料金、キャンセル条件などを確かめる場面を設ける。これは公式プログラムの仕様を断定するものではなく、サービスを設計する側への実務上の提案である。

既存の取り組みとのつながり

博報堂は以前から、CX AI STUDIOやNEW CX READYなど、AIや試作を使った顧客体験の支援を発表してきた。今回の発表は、それらと同一のサービスを別名で呼ぶものではなく、新たなサービス開発を企画から実装検証へつなぐ枠組みとして説明されている。

企業が比較する際には、提供者の看板だけでなく、成果物、担当範囲、利用データ、評価基準、納品後の運用を並べると違いを把握しやすい。価格が公開されていない以上、共通の要件で見積りを依頼する必要がある。

AI社員や専門エージェントを含む業務・顧客接点の設計については、運営会社のRO合同会社も公式サイトに相談窓口を掲載している。何を作れるかと同時に、誰が使い、どの判断を人に残すかを定めることが出発点となる。

参考報道:イノベトピア。短縮率は提供元の説明であり、本メディアによる導入効果の測定ではない。

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柴亮太
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