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生成AIの利用率を社内施策へ使うなら、最初に確認したいのは、誰に何を聞いた数字かという点だ。ARCHECOが2026年8月に公表した新規事業に関する調査は、2万人への回答から、業務への関わり方とAI利用頻度を読み解いている。役職別の差だけを切り出すと、調査が示す課題を取り違えやすい。

本稿では同社の公開集計に基づき、利用の機会、担当上の責任、組織の意思決定という順で考える。調査結果と、そこから当サイトが提案する運用方法は区別する。ARCHECOの調査原典

2万人と4,794人を混ぜない

調査は2026年8月17〜19日、25〜69歳の会社員・経営者/役員を対象にインターネットで行われ、有効回答は20,000人だった。そのうち、直近3年に新規事業の検討・推進に関わった4,794人が、利用頻度を分析する中心の集団である。

この関与者の33.6%が生成AIをほぼ毎日使い、週1回以上では66.4%となった。日本の会社員全体の66.4%が新規事業でAIを使っている、という意味ではない。会社で導入されたか、個人が使った経験があるか、毎週仕事で使うかも異なる設問だ。

原典は自主参加型のオンラインパネルであることを開示している。課長クラス以上が38.2%、55歳以上が40.8%を占め、日本の就業者全体の推定値としては扱わないよう求めている。回答数が多いことと、母集団の構成を代表していることは別に確認する必要がある。

仕事を任された人に利用が集まる

新規事業の責任者2,016人では週1回以上の利用が78.5%、メンバー2,778人では57.7%だった。毎日の利用もそれぞれ48.9%、22.5%と差がある。担当する範囲や、判断しなければならない仕事の量が、利用の必要性と結び付いている可能性を考える材料になる。

役職別では、一般社員55.4%、係長・主任61.2%、課長71.3%、部長75.7%と上がり、経営者・役員は58.6%へ下がる。しかし上位の役職ほど責任者として関わる割合が高い。同じメンバー同士で比較すると、一般社員52.5%と課長63.4%のように差は小さくなる。

したがって「管理職という肩書きを与えれば利用が増える」とは言えない。自ら企画を検証する役割、利用できる情報、時間、ツールへのアクセスが違う可能性がある。原典の分析も、関連を観察したもので、因果関係の証明ではないと留保している。

参加機会と利用頻度を分けて改善する

女性の新規事業への関与率は20.5%で、男性24.7%を下回った。一方、関与した人の週1回以上のAI利用率では、女性72.6%が男性65.3%を上回っている。この結果は、ある属性の人がAIを使いたがらないという単純な説明では扱えない。

企業規模でも似た論点が見える。新規事業への関与率は従業員300〜999人の企業で30.4%と高い一方、関与者の毎日利用は49人以下で23.3%、5,000人以上で45.5%だった。事業へ参加する機会の広さと、参加後にAIを使える環境は、別々の指標として管理したい。

例えば社内で利用率が低い部署があれば、最初から研修の不足と決め付けず、そもそも検討案件へ参加しているか、入力可能な資料が整っているか、出力を使う承認経路があるかを見る。研修の受講者を増やしても、仕事を試す機会がなければ頻度は上がりにくい。

年齢や会社規模を理由に決め付けない

年齢帯別の週1回以上利用は、25〜34歳77.3%、35〜44歳75.6%、45〜54歳66.7%、55歳以上59.0%だった。55歳以上の一般社員では39.5%という集計もある。ただし、年齢を境に能力や適性が一律に変わるという証拠ではない。担当業務や経験、参加の仕方が同時に関わる。

経営者・役員では、ほぼ毎日の利用36.2%と、ほとんど・全く使わない26.5%が併存した。不使用の189人のうち79.4%が55歳以上、74.6%が49人以下の企業だった。一方、大企業の経営者・役員に限った毎日利用70.9%は、回答55人という小さい集団の参考値である。

これらは支援を届ける相手を考える材料にはなるが、特定の年代や小規模企業を一括で遅れていると評価する根拠にはしない。少人数の会社では、担当者が情報収集から契約、現場対応まで抱えることもある。操作教育だけでなく、使える業務を一つ選び、入力資料と確認方法を準備する支援が適しているかもしれない。

他の調査を並べるときの注意

パーソル総合研究所の生成AIとはたらき方に関する調査発表も、管理職層の利用や時間削減の実態を扱っている。ただし対象者、実施時点、設問が異なれば、数字の差をそのまま増減や優劣にはできない。後続調査と比較する場合も、同じ指標かを確認する必要がある。

社内調査なら、全員に同じ頻度の選択肢で聞き、利用できない理由も併記するとよい。禁止されている情報が多いのか、アカウントがないのか、試したが使い道が合わなかったのかでは、対応が違う。数字だけを目標にすると、不要な利用を増やしたり、未承認の利用を見えにくくしたりするおそれがある。

企画が増えた後の判断を設計する

当サイトが実務上の次の課題と考えるのは、案を作る工程と、案を選ぶ工程の接続である。企画書の作成が速くなっても、顧客への確認や、予算の判断に必要な根拠が増えるとは限らない。提案数だけを成果にすると、確認待ちの資料が積み上がる。

小さな運用では、企画ごとに顧客の課題、裏付けとなる事実、未確認の仮説、次に行う検証、判断担当者を残す。AIには案の整理や比較を任せても、実在しない顧客の声を埋めさせない。採用数、検証までの日数、修正や棄却の理由を見ることで、作成速度を事業の判断へつなげられる。

原典は設問、単純集計、クロス集計のCSVを出典明記で使える形で公開している。図の印象だけでなく、分母や組み合わせを確かめられる点は有用だ。同社は追加調査も案内しているが、今後の結果を本調査の実測値として先取りしない。

調査が示すのは、全社一律の導入策だけでは見えない利用の分布である。自社のAI活用を検討する際も、使う人の肩書きだけでなく、任されている仕事と、試せる条件に目を向けたい。当サイト運営のRO合同会社でも、こうした業務と確認体制を含むAI活用の相談を受け付けている。

参考報道:イノベトピア。調査数値の確認にはARCHECOの原典を用いた。

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柴亮太
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