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電話で相談している最中に処理待ちの無音が続くと、相手は会話が途切れたのか判断しにくい。音声AIが予約や照会まで担うようになるほど、答えの質に加え、処理の途中をどう伝えるかが問題になる。GoogleのGemini 3.8 Liveは、この待ち時間を含めた対話の設計を打ち出した。

会話を続ける機能と、考える能力

Googleの発表は2026年9月15日公開、9月17日更新。標準のGemini 3.8 Liveは規模と費用効率を重視し、Extended Thinkingは複数段階の推論を伴う複雑な仕事を想定する。10月21日時点で公式説明を読み直した。

標準版は映像から得た状況を対話に取り込み、97言語を会話中に検出・切り替えるとされる。ツール呼び出しを背景で進めながら会話を維持する点も特徴だ。Extended Thinkingでは推論と発話を並行し、依頼を受け止める言葉や処理状況の説明を挟む設計を示している。

ただし、声が続いていることと、外部処理が成功したことは同じではない。予約の確認中という発話が自然でも、予約先のシステムが失敗を返せば、最終結果は失敗だ。サービス側には、途中の案内と確定した結果を明確に分ける仕事が残る。

利用経路にも違いがある。発表では開発者向けの提供に加え、企業向けの一部はプライベートプレビュー、別の製品への展開は今後の予定として記されている。製品名が並んでいるからといって、すべての契約・地域で同じ機能が同時に利用できるという読み方はできない。

会話の層と推論の層を分ける設計もある

OpenAIのGPT-Live発表は、聞きながら話す対話モデルと、検索や深い推論を担う別モデルを切り離す設計を説明している。GoogleがExtended Thinkingで前面に出す並行した推論と発話とは、製品説明の重点が異なる。

ここで比べたいのは、どちらが人間らしいかだけではない。外部処理が遅いときに何を話し、結果をどう会話へ戻し、失敗時にどこが責任を持つかだ。会話と推論が一体でも分離されていても、利用者に完了状態を誤解させない設計が必要になる。

首位の数字が、そのまま現場の完了率にならない理由

GoogleはExtended Thinkingについて、Artificial AnalysisのSpeech to Speech Quality Indexで82.6、τ-Voiceで68.6%、銀行業務を扱うSierraの評価で35.1%を示した。これらは発表資料の測定値であり、現在の全モデルに対する恒久的な順位を示すものではない。

それぞれ測る対象が違う。聞き取りや会話上の好ましさ、道具を使って課題を完了する能力、規則を守りながら業務を進める能力は、単一の数値では表せない。推論を深くすれば課題の正確さが上がっても、応答が長くなるなど対話体験との調整が必要になる。

公式資料はServiceNowのEVA-Benchでも、正確さと会話品質の両方を軸にして説明している。日本語の接客へ当てはめるなら、一般的な指数に加え、住所、姓名、支店名、敬語、言い直しへの対応を確かめる必要がある。多言語対応の一覧に日本語があることは、個別の業務用語に誤りがないことの証明にはならない。

特に数字や日付の誤りは、会話の印象だけでは見逃しやすい。説明を聞いた評価者には自然でも、書き込まれた予約日が違えば業務は成立しない。音声の評価と、外部システムへ渡した値の評価を分けることが大切だ。

料金は音声だけでなく、一件の用件で考える

公式料金表では、モデルと入出力の種類ごとに条件が分かれる。10月21日確認の有料Standard欄では、音声入力は100万トークンあたり3ドル、音声出力は12ドルで、参考の分単価はそれぞれ0.005ドル、0.018ドルと示される。出力料金には思考トークンを含む。無料枠と有料枠ではデータ利用などの条件も異なるため、単価だけで契約を選ばないことが大切だ。

音声のトークン単価から算出した一分あたりの参考値を、時間課金の別製品とそのまま比較すると、推論やツール利用、会話の長さの違いが抜ける。

以下は編集部の比較方法の提案である。問い合わせを一件終えるまでに、何分話し、何回確認を挟み、どれだけの音声出力と推論を使い、人へ引き継いだかを集計する。短い定型照会と、長い相談では、同じ入力一分でも必要な処理が異なるためだ。

途中の進捗説明は、沈黙を減らす一方で出力も増やす。毎回詳しく話すことが最適とは限らない。待ち時間の見通しが立つときに短く知らせる、状態が変わったときに伝える、といった設計を試す余地がある。これは製品の実測結果ではなく、運用を考える際の着眼点だ。

日本の業務で先に決めたい境界

例えば施設の空き状況を調べる用途なら、照会は自動で進めても、確定予約は利用者の確認後に行う設計にできる。料金や取消条件が変わったときには、前の承認を流用せず、変更した点を説明する。人の確認が必要な場面は、声が自然になっても残る。

逆に、影響の小さい照会まで毎回確認を要求すると会話が煩雑になる。何を自由に調べられ、どの操作が外部へ影響し、どこで承認を求めるかを業務単位で定めるほうがよい。権限の境界を、AIの話し方だけに任せないということだ。

映像を使う場合は、音声の録音とは別に、画面や周囲から何が入るかも考える。問い合わせと無関係な個人情報や社内画面が写り込めば、便利さと引き換えに扱う情報が広がる。必要な場面だけ映像を使い、保持やアクセスの条件を契約と照合する必要がある。

Googleは生成音声へのSynthIDの付与も説明している。ただし、透かしがあることは、音声の説明内容が正しいことや、その業務操作が承認済みであることの証明ではない。生成元の手掛かりと、内容・権限の検証は別に置く。

音声エージェントは「何秒で話し始めるか」の競争から、待ち時間、結果、引き継ぎを含む仕事全体の設計へ進んでいる。発話と推論の並行処理はそのための部品であり、導入の完了条件そのものではない。公式機能を確認したうえで、自社の用件が正しく終わったかを測れる形にすることが出発点になる。

参考:イノベトピア、Gemini 3.8 Liveの公式モデル資料、Extended Thinkingの公式資料。本記事は資料確認に基づく解説で、APIによる実測は実施していない。

運営会社・AIの業務導入について:RO合同会社。

柴亮太
柴亮太の視点